所長のひとひら通信2011/10月


 

 〜2011.10.5〜
  所長のひとひら通信
      『下田逸郎のひとひらあわせ』と『下村陽子の紅い花咲いた』

                          下田通信所 所長 西谷千里



  NY公演の後、東京のスタジオで、下村陽子の配信用の唄を録音した。スタジオということもあってか、昼間ということもあってか、ライブで聴いた時ほど強烈ではなかった。目の前の人間に向かい唄ってこそ、輝く人なのだろうか。

  沖縄普天間でのライブ盤を出そうという話になった。下田逸郎は、久しぶりに音楽業界を訪ね、下村陽子の唄を聴かせた。「いい唄だね」と言いつつも、「美人じゃないね」とも言われたらしい。唄っている瞬間に、ものすごくきれいになるというのに。

  「千里がやってよ。ケーキみたいにやってよ」と言われた。
私は今、三郡山のふもとで、ひとひら工房食品部から、くるみとドライフルーツをたっぷり入れたパウンドケーキをスーパーASOに卸している。ここ飯塚は病院もゴルフ場も全部『あそう』である。パウンドケーキを一切れづつ個袋に入れ、シールを貼る。そんなふうに、CDを創れと下田逸郎は言った。漢方薬の袋に入れたCD『キツネササゲリュウノヒゲ』を思い出す。富山の薬売りが、一年に一度、使った薬を補充して歩く。自分の唄と旅を重ねたのだろう。福岡の小さなスタジオで、弾き語りを終えた後、リコーダーやパーカッションを重ね、たった一人で創った。漢方薬の袋を探し歩いたこともなつかしい。

下田逸郎は、今 そこから始めようとしている。
ひとひら工房も、そこから始めたいと思った。

自然食品の店「げんき」の店主 田中仁に早速相談した。彼の店から発送する箱には、意味も無く、三郡山の写真と『紅い花咲いた』の歌詞を入れたいと言う。CDとつながったと思った。「一人呼んでいいすか?」。現れたのは、犬の調教師が本業の藤中亜希子。今は何でもやる時と、田中仁と組んで、オリジナルTシャツを作ったりしている。下田逸郎を知らない若者である。何の思い入れも無く、バッタバッタと切って来る。今年の春、彼女に3ヶ月育てられた子犬をもらった。さすがに賢くしつけられていて、立派に、ひとひら工房の番犬に育ちつつある。

30年前に、『サーカスサーカス』や『バーボンハウス』で、隣の席に座っていた楫本哲郎太とは、いつでも横に並んで聴いているファン同士である。折に触れ、新曲のこと、次のCDのことなどを話す。初めて、下村陽子をゲストに迎えての京都拾得のライブ終了後、興奮した声で電話をくれた。「『この世の夢』下田さんよりええんと違う?」。相当、気に入ったらしい。思い切って、沖縄ライブの音源を送ってみた。「今、3曲目」と次々に感想が送られてくる。「そんなに気に入ったなら、手伝う?」「よっしゃ、何でも言うてや」と、決まった。彼だけは大阪在住なので、ミーティングには参加できないが、毎日のようにアイデアが送られてくる。

下田逸郎を入れてこの5名での制作が始まった。手作りを活かす材料探しに始まり、日毎に形になってきた。歌詞カードは小さくても、全曲下田逸郎手書きの譜面にした。

今回のCDは、二つのタイトルを持つ。『下田逸郎のひとひらあわせ』と『下村陽子の紅い花咲いた』である。作家下田逸郎の作品の世界と歌手下村陽子の世界、二重にお楽しみいただけると信じている。14日の京都拾得に間に合わせたいと進めている。


2011年10月5日

                               下田通信所 西谷千里







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